Tuesday, September 27, 2011

夜になるとマリアは

先日のこと、無性に小澤マリアの性器が見てみたくなって一生懸命インターネットで探したことがあるという話を友人から聞いた。多分、今ほど無修正のビデオが出回っていない時期のことだったのだと思う。
「なんかね、小澤マリアのアソコ、トンボみたいなの」
友人はわずかに顔を歪めながら、おかしそうに笑って言った。

彼女が知らないこと、それは小澤マリアは本当にトンボなのだということ。

夜になるとマリアは、紫と肉色のトンボになる。
両足をとうもろこしの皮のように剝いで、露わになった羽をうち震わせると、夜の東京の空にブーンと飛び立つのだ。
六本木ヒルズを超え、東京タワーを旋回し、レインボーブリッジの下を潜り抜ける。ホバリングすると、キラキラと輝く水面に指と髪の先を濡らし、また思い立ったように風を切って進む。

夜の埋立地はトンボ達のパラダイス。

鳥の糞が運んで来たイヌガラシ、メヒシバ、セイタカアワダチソウの海を美しい羽をした仲間たちが飛び回る。お互いの気まぐれな軌道を追いかけながら、ゴミの匂いのする風に乗って舞い上がる。

UFOキャッチャーの景品だった薄汚れたぬいぐるみの上に羽を休ませると、雄のオオシオカラトンボがツッとその上に重なり、腹部の把握器でぎゅっとマリアの中心を掴み上げる。

朝が来るまで、二匹は一つの輪になる。

そんなことを夜な夜な繰り返す。

どこのブランドのバッグを買っただとか、ネールアートを新しくしただとか、道を歩くたびにキャッチに声を掛けられてウザいなんてブログに書いているマリアは本当のマリアではないのだ。








Saturday, September 24, 2011

FEN の名作動画劇場3

こんにちは、フェンです!
長い夏休みから帰ってきました。

さて最近あるマーケティング会社のトップから聞いて驚いた話について。facebook というと、なんというか、純粋にマーケティングツール、もしくは電子名刺的なお会いした人の記録帳みたいな使い方をしていると思うのですが、今の若い人は違うらしいんです。なんと、彼らにとって facebook は質問サイト。友達におもしろい音楽や漫画や映画の情報を教えてもらうためのツールらしいんです。なんだかなぁ、です。仕事をしていても思いますが、今の若者ってリサーチをするという概念がないような気がする。別に僕はどうでもいいんですが、なんかもったいないよな、と思ってしまうんです。たとえ facebook で情報が取れるとしても、その程度の知的好奇心しかない子が面白い友達のネットワークを持っているとは思えないし、一方的に「教えて、教えて」ばかりだと例え面白い子がいたとしても嫌われたり無視されちゃうんじゃないでしょうか?

長々と書いてしまいましたが、本当に wikipedia で分かったフリをするのがどんだけ危険なことか皆に啓蒙したいです。知ったかぶりやイメージだけで生きてると、何にもならないよ。最近の地震とかの一連でも代理店のしたことなどに色々思うところがあって、まあ、そのうち色々書けたらと思ってます。

フェンでした!







The Blue Hearts: Image


Friday, September 23, 2011

人から借りた本感想文:『レベルE』 冨樫義博



冨樫義博といえば『幽遊白書』。『幽遊白書』といえば、確か小学生の時に読んだけれどあまり覚えてなくて、どちらかというと『欲情列島宅配便 私の処女を破りに来て!!!』の印象が強すぎて、なんだか嫌な印象しかない。『欲情列島』についてはググって後で友達に「これ知ってる?」って自慢するといいよ。

まあ、それはともかく、『レベルE』。
小学生男子感がいっぱいの宇宙人SF物なんだけど、このレベルの高さはなんだ!というクオリティー。近年のエイリアン映画、全部元ネタこれなんじゃん、みたいな。とにかくアイロニックだし、プロットのひっくり返し方も半端ない。本当に天才的。とにかく面白いから読んだ方がいい。

映画『アイズワイドシャット』のレビューで、「最近、世の中のほぼすべてのことは『キュート』という言葉で表現することができるが、この作品はそうではない」っていうのがあって、これ書いたライターさん天才だなと思ったのだけど、この漫画も同じ意味で本当に『キュート』ではない。いや、ぱっと読んだ感じはドタバタギャグ漫画で最高にキュートなのだけど、もの凄くクレバーだし深遠でとにかく考えさせられる。

自分の持ってる善悪の基準が本当に正しいのか、独りよがりになってはいないのか、そういうテーマを説教臭くならずに書くのって非常に難しいと思う。でもサラリとなんでもないように書いちゃってるのが死ぬほどカッコいい。

「始まりの国へようこそ!」



Monday, August 22, 2011

今日のドギースタイル

みなさん、元気かな?
わたしはニート!

今日のドギースタイル、久しぶりのアップデートだお

なんか、ツイッターとかブログとかで
『しんちょうの ちっこいわたし きょうも ふえをふくよ 
あまいものと とろけるおんがくが すき』
というようなノリの自己紹介文引っさげた女を見かけると
殺意を抱いてしまうわたしは心が狭いのかなぁ
お前ら可愛い顔して笛とか吹く前に、アレをこうレロレロ舐めてんだろ?!
とろけるおんがくの前に、お前のマンコがとろけてんだろ??!!
とか思ってしまうひがみっぽいわたしはやはり心が狭いのかなぁ

さぁ今日のドギースタイルはこの子だお!
とてもかわいいんだお!



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名前:エイフェックスツイン
性別:オス
種類:樺太犬
年齢:不明
趣味:じゃれる、散歩、とりあえず体を動かすのが好き
特技:いつまでも「待て」ができるよ
好きな食べ物:夏の冷たいコカコーラ
嫌いな食べ物:酸性雨
チャームポイント:ぱっちりお目目
読者へのメッセージ:いつまでも待ってるよ君を
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あぁ今日は切ないなぁ、
あぁ〜ん、女のドロドロ見せちゃったかしら
エイフェックスツインのように辛抱強い心を持ちたいなぁ!

Tuesday, August 16, 2011

ザ☆取材拒否の店!西荻窪 〇ンコ・〇ンコ

今日も明日も食べ歩き、田町のジャスティン・ビーバーこと、タクティ〜☆です。

巷はお盆休みの終わる頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか? この暑さだと夏バテしないように注意が必要。食欲が落ちた時にはスパイシーな食べ物がおススメですよ。

さて今日の取材拒否の店は、そんな夏バテ対策にぴったりのカレーハウス、 〇ンコ・〇ンコ。場所は隠れた名店の多い西荻。ちょっと駅から離れたところにあります。ちなみに余談ですが、渋谷にマンゴ・マンゴというトモチン君お気に入りのゲイバーがあるそうです。ナイスネーミングですよね~。

さてさて、ここのおススメはワンワンカレー。

別に犬の肉が入っているわけではないのでご安心を。

r e d r i v e r の皆さん、無類の犬好きなんで、そんなの紹介したら多分私が肉にされちゃいます。

なんとこの店、お食事をしながらワンちゃん気分が味わえてしまうんです!

床でお座りして待っていると、カレーのいい匂いが漂ってきます。インドのデリーで修行を積んだシェフ、K山さんのカレーは本当に絶品。小生の都内トップスリーです。

さて、召し上がれとお姉さんが出してくれるカレーをもちろん四つんばいになってワンワンスタイルでイタダキマス。

さてさて、肝心のお味は?


メニューはすべてアルミのボールでサーブされるので、
ワンちゃん気分が盛り上がること間違いなし。
ちなみに首輪の無料貸出しサービスも。


うまい!!!

なんと9時間炒めた玉ねぎと50種類のスパイスが入っている濃厚なルーはうまみの塊。また二日間かけて煮込んだ牛のスネ肉が、口に入れた瞬間舌の上でトロトロにとろけます。また隠し味には贅沢にも夕張メロンが入っているそう。インド仕込みのシェフがたどり着いた究極の西洋風カレー。犬になりたい人も、別にどうでもいい人も、このカレーは食べなきゃ死ねません。

ちなみに小生はバター犬になりたいです。わんわんお!


【お店データ】
店名:〇ンコ・〇ンコ
場所:西荻窪
評価:☆☆☆
おすすめ:ワンワンカレー(牛)


Tuesday, August 9, 2011

r e d r i v e r お悩み相談室: ドキッ、電車で片思い!?

25歳6ヵ月のフリーター♀です
毎朝通勤電車でいつも一緒の車両になる女の子を好きになってしまいました。
男だったら勇気を出して声を掛けた方がいいのでしょうか? 
一度、後を付けてみたところ、その女の子は渋谷にあるショップで働いてるみたいです。r e d r i v e r の皆さん、どうかいいアドバイスをお願いします!

(練馬区 ぱーぷるれいん さん)

***

みなさん、初めまして! お悩み解決のプロこと、トモヒロです。
トモチンって呼んでね☆

r e d r i v e r お悩み相談室、記念すべき最初の質問です。
ちょっとドキドキ~!!!

ま~ずこの状況でしてはいけないのは、電車の中で声を掛けること。
そんな場所でナンパをしてくる男なんてチャラいと思われ、すこぶる悪いイメージが付いてしまいます。

と、いうワケで以下の方法をお試しアレ!

まずアナタの友達の中で一番かわいい女の子とその子の働くお店に行って、何も知らない顔で接客してもらって下さい。(その際、友達が試着をしている時に彼女と当たり障りの無い会話を試みること。友達のことをカワイイと褒めるのも忘れないで!)そしてお礼を含めその友達に洋服の一枚でも買って、それから店を後にして下さい。

するとすると、次に電車で合ったとき、もうアナタとその女性は顔見知りになっています。販売員というものは買い物をしてくれたお客さんの顔を忘れないものなんですね!

「カノジョさん、ワンピースとてもお似合いでしたね」という言葉が引き出せたらもうアナタの勝ち。
「いや、あれ、僕の妹なんですよ」
「え〜、カノジョさんかと思いましたぁ!」
「僕、全然モテなくて」
「そんなことないですよお〜」

彼女の中では、もうアナタは妹の買い物に付き合ってあげる上に洋服まで買ってあげる優しいお兄ちゃんです。ファッキンクリーピーなストーカーにはもったいない、なんと素晴らしいイメージ!!!しかも電車の中で再開なんて運命の出会いかも!?

あとは毎日少しずつ会話をして、二人の距離を縮めて下さい。

r e d r i v e r (とトモチン)は、ぱーぷるれいん さんの恋愛を応援しています!



Monday, August 8, 2011

人から借りた本感想文:『赤い蛇』 日野日出志




旧家に産まれた主人公。頭のおかしい家族に囲まれ、逃げ出したいと思いながらも、叶わずにいる。

息子である主人公の父が届けてくれる卵を日本間に作った巣で温める祖母、その夫であるサンショウウオのような風貌の祖父は顔にできた瘤を嫁に踏ませて膿を出させるのが日課。姉は姉で虫を使った自慰行為に耽っている。母と祖父、父と祖母という捩じれてしまったセクシャル・テンション。居場所のない主人公。まあそんなこんなで色々あって、卵になった祖母が孵化し、母親も祖父の膿で孕んだ奇形の子を産み、そのニュージェネレーションの二人が殺し合いをするうちに、他の家族も巻き込まれみんな血みどろというもうどうにでもなれ的な展開はグロテスクで思わず圧倒されてしまう。

鏡だとか蛇だとか卵だとか、神話的なシンボルを多用している割には、なんというかそのまますぎて深みがない。Savior としての赤い蛇も、プロット的な流れとバッティングするため単なるセクシャルな存在に留まってしまっていて消化不良の感がある。同情的に描かれている主人公も一見プロタゴニストの役を負っているように見えるが、よくよく読んでみると全く自主的なアクションを取っていない。もちろん、恐ろしい蛇に追いかけられれば逃げようとする。しかしそこには何の判断もない。そんな indecision に対する罰として、エンディングで最初のシーンに戻ってしまうという永久ループ的なオチは納得できないこともないけれど、やっぱり葛藤というものがない分、フーン、で終わってしまう。恐らくものすごく影響を受けているであろう、メメクラゲに刺されても生きようとする『ネジ式』の主人公との温度差は歴然だ。

日野日出志さんによると、これは結局『自分の血筋(家)というものからは逃れられない』、ということを表しているらしいのだけれど、そういうのといかに折り合いをつけて生きていくかを模索するのが文学なり漫画の役目なんじゃないかと思う。

普通。

Monday, August 1, 2011

r e d r i v e r お悩み相談室


r e d r i v e r ではあなたのお悩みを募集しています!

お悩み解決のプロがあなたに代わって google で検索しちゃいます!

みなさん奮ってご応募下さい!




お悩みは bytheredriver@gmail.com マデ!!!










Sunday, July 31, 2011

渋谷暗渠探訪3

これまでのインタビュー

Mさん(以下M):メメモダケを発見したんです。

編集T(以下T):メメモダケ?

M:貯水槽から地上に戻ろうとしたら、まっすぐに歩けばいいだけのはずなのに何故か道に迷ってしまったんです。当時は暗渠の中は真っ暗で、もう二度と地上に出られないかもしれないと途方に暮れていたら、ぼんやりと明るい光が見えてきて……

ここでMさんは用意してあった段ボール箱を取り出すと、慎重な手つきで蓋を開きその中味を見せてくれた。中から現れたのは黄緑色のキノコだった。発光性なのか、辺りの暗闇がほんのりと優しい色に染まった。メメモダケ、どこかで見たことがあるような……。

M:そうです、スーパーマリオブラザーズの1UPキノコはメメモダケがモデルなんです。

T:へぇー!!! 



実際のメメモダケは嫌光性



M
滋養強壮に優れたメメモダケだからこそ、きっと生命が一つ増えるというアイディアが生まれたんですね。また不老不死を求めた始皇帝が煎じ薬として飲んでいたという史実も残っています。まさかそんな貴重なメメモダケをこんな場所で見つけるとは思ってもいませんでした。

T:すごい発見ですね!

M:人工的に栽培が可能になれば、それは現在の医学や薬学に大きな躍進をもたらす。今は難しいとされている病気の治療にも役立つかもしれない。

現在、Mさんは『メメモダケ研究センター』の所長として日夜メメモダケの研究・栽培に取り組んでいる。来年度には政府からの助成金も支給される。


暗渠から地上に出た私は思わず目を細めた。暗闇に慣れた目には眩しすぎる激しい七月の日差しだった。渋谷の喧噪を聞きながら、Mさんが別れ際に言った言葉を思い起こした。

「最近なぜか無性に犬がまた飼いたいんですよ。茶色のテリアかなんか。歳を取るってこういうことなんでしょうね」


渋谷暗渠探訪:完






Friday, July 29, 2011

今日のドギースタイル

幼い頃、親戚のおじちゃんが飼っていたコリーにしがみつき
2キロ程度ハングされたあと生還したわたし、
犬との会話の成立度が半端ないわたし、

時にはこの子には犬のDNAが流れているんじゃないかと崇められ、
時には犬神家の隠し子、WACKのアバズレと呼ばれ忌み嫌われもしたわたし

そんなわたしが今日もわんこを紹介するお!!



今日のわんおは、JCVDさんのわんおぶだPOOCHの紹介だお!

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名前:SCARFACE
名前の由来:JCVDさんの趣味
性別:不明
種類:拾われたわんお
年齢:不明
趣味:お前らよりリッチなこと
読者へのメッセージ:タイに行ってきた〜暑かった〜食べ物おいし〜
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JCVDさんのインタビューによると、
9匹のわんおと猫を飼っているらしいお!
そして、JCVDさんにとって一番のオーガズムは、犬とビーチを散歩するということらしいお!
(ソースはココだ)

パラフィリア!!

Monday, July 25, 2011

ザ☆取材拒否の店! 谷中 D カフェ

グルメ一筋20年、田町のオーランド・ブルームことタクティ〜☆です。

台風も過ぎなんだかまた暑さが急に戻って来た感じですね。温暖化でただでさえ気温が上昇しているうえに節電までしなきゃならないのですがら、小生みたいなデブにとっては試練の日々になりそうです。が、電車の照明が落とされているのは雰囲気があっていいですよね。

さて、今日はそんな暑い日にぴったりの取材拒否のお店。古くからの付き合いがあるマ●ジンハウスの人に教えてもらいました。

場所はおしゃれなギャラリーやカフェが集まる谷中。
大正7年に建てられたという出桁造り(だしげたつくり)の町家はなんともレトロな佇まいです。サブカル系の若い女の子なんかを連れて来てあげたら喜ぶのではないでしょうか?

いわゆる純喫茶というヤツなのですが、日光で切り出された天然の氷を使ったかき氷が有名です。メニューは、メロン、いちご、ブルーハワイ、紅茶ミルク、宇治金時などオールドスクールなものが並んでいますが、その中でひときわ目につくのがナポリタンの文字。

かき氷なのにナポリタンなんですか!?

驚いて聞いた小生にやさしく答えてくれたのはこの店の看板娘のS美さん。長い黒髪が美しい清楚なお嬢さんです。

「この店を始めた祖父が考案した自慢のメニューなんですよ」とニッコリ。

嫌な予感がしますが、もちろん自慢のメニューと聞いたら頼まないわけには行きません。

シャリシャリと氷を削る音が響き、なんとも涼しげ。風鈴もチリンと鳴って、ああ夏っていいですね!




さて、出て来たのは一見普通のかき氷。ケッチャップ味、もしくはナポリンタンの上に乗った氷を想像していた小生は一瞬拍子抜け。

これのどこがナポリタンなんですか!?

驚く小生を尻目に優しく微笑む看板娘。

「どこもナポリタンじゃないですけど、素敵な名前だと思いませんか?」

ああ、確かに素敵な名前だね。

口の中でシャリっと溶けた氷はほんのり甘い味がしましたよ。


【お店データ】
店名:谷中
場所:Dカフェ
評価:☆☆☆
おすすめ:ナポリタン(かき氷)



Sunday, July 24, 2011

人から借りた本感想文:『晴れ、トキドキ胸キュン』 斉藤ミチル

引っ込み思案であまり目立たない優等生の女子高生、文子がある日偶然出会ったのは隣町で札付きのワルとして有名な金髪のハルキだった。全く違うタイプでありながら惹かれていく二人。そしてある日、ハルキが暴走族に乱暴されそうになっている文子を助けたことで二人は急接近し、めでたく雨の降る公園のベンチで結ばれる。ラブラブな期間も束の間、なんと文子の妊娠が発覚。両親の猛反対にも関わらず、家族として生きていくことを決意する二人。ハッピーエンドかと思った矢先、ハルキは親友に騙されて死体遺棄事件に関わってしまう……。

優等生を標榜しているクセに、ハルキの誕生日になにもプレゼントができないからといって、同級生の親が経営する花火工場に火を点けて二人で「きれいだね」なんて見物してしまったりする文子が最凶。真似してはいけない。またバレンタインの時に徹夜で作ったチョコレートが盗まれてしまうのだけれど、間違って青酸カリを入れていたため、文子たちの恋路を邪魔しようとしたハルキの幼馴染カノンが死んで犯人が発覚するというブッ飛んだエピソードも。「次は砂糖と青酸カリ間違えんなよ」と文子の頭をポンポンと叩きながらちょっと嬉しそうにチョコレートを握りしめるハルキはとても寛容で思わず胸キュンしてしまった。

文子は最後に巨大化して東京副都心を襲うのだけれど、都民はそれを自然に受け入れて、何のリアクションも示さないところがちょっと新しいと思った。まあテレビ付けたら一日一回ぐらいは何かが巨大化しているし、日本人にとっては何も不思議のない自然なことなのだろうなんてガイジンが言いそうだ。ちなみに頭からボリボリと食べられる石原都知事は作者が敬愛するゴヤへのオマージュらしいです。

普通よりちょっと面白かった。

Wednesday, July 13, 2011

人から借りた本感想文:『うみべの女の子』 浅野いにお





『私、繊細だから』と真顔で言えちゃう人って本当に長生きできそうで羨ましい。なんかご飯とかもよく食べそうだし、歯とか消化器官とかも強そうだし。

海辺の町に住む中学生の日常を淡々とオムニポテントな三人称単数で描いた物語。正直、ちょっと前にお借りして一回サラッと読んでお返ししてしまったのでストーリーはうろ覚えですが、喪失感とか、セックスとか、暴力とか、大人が中学生の話を書く時にまず思いつくであろう要素がこれでもかといっぱいに詰まっています。

傷つきたくないから自分から先に周りをシャットアウトしてしまうという典型的な思春期少年、磯辺と、自分中心にしか物事が把握できないため、現実との真っ当な関係が築けない愚かな小梅。この恐ろしく幼稚な二人が恋愛をするというよりセックスをすることで物語が進行していくのだけど、恐らく力を入れて描いているであろう性描写は独特なグロテスクさがあり非常に秀逸です。

作者の浅野いにおさんはジャパニーズ・エモの教祖のような方だそうで、詳しいことはウィキペディアでも参照してくださればと思うのですが、この作品を読んで『エモさに対する嫌悪感というのはどこから来るのだろう?』という問いに関する自分なりの答えが出たような気がしました。

要は、エモとはナイーブさを最大限に理想化したものであり、その根底にある精神構造は『ありのままの自分』とか『等身大』とか『ナンバーワンにならなくてもいい』的な生温い自己承認なんじゃないでしょうか。チェスタートンの名言で『世の中は、君の理解する以上に栄光に満ちている』というのがあって、結構好きなんですけど、多分、磯辺君も、小梅ちゃんも、そんな栄光とは無縁の人生を送って行くんだろうなと思います。東京に出て、バイトしながら西荻辺りでなんとなく好きな人と同棲生活、みたいな。で、一生自意識に囚われたまま、傷つけたり傷つけられたりしながら生きていく、と。

『私、繊細だから』という言葉の裏にある『お前はそうじゃない』という傲慢さ、過剰な自己評価、一般人に対する特別な自分。この本の中の子達はまだ中学生だからいいけど、いい歳して結構こういう人多くてウンザリします。

普通に面白かったです。

Tuesday, July 12, 2011

渋谷暗渠探訪2

編集T(以下T):まずはこの場所に住もうと思ったきっかけを教えて下さい。
Mさん(以下M):えっと、まあ早い話、ウチの女房が浮気してる現場を目撃しちゃったんですよね。
T:えっ!
M:コリーなんですけど、子犬の時に売れ残ったヤツをそのまま飼ってたヤツで。なんていうか、もう完全に飼い犬に手を噛まれましたよね。
T:っていうよりも『飼い犬に女房をファックされた』ですよね(笑)。
M:ははは。
T:で、そのまま家を出られたんですか?
M:いや、まあ、それなりの復讐というか、なんというかはしたんですけど、まあ、そうですね。
T:この場所のことはずっとご存知だったんですか?
M:いや、なんというか、ちょっと捨てなきゃならないものがあったんですけど、でもなかなか捨てられなくて、ずっと都内を彷徨ってたらもう疲れちゃって。もう焼けっぱちになって川にでも流してやれとここまで来たんですけど、ヘドロが溜まっていて全然流れてないんですよ(笑)。でもだったらヘドロの下にでも埋めようかと思ってとりあえず橋の下まで下りてみたら、なんか鉄柵があるのが見えて、この中だったら捨て場所にぴったりだなと思ったんですけど、まさか開かないだろうなと思ったら案外鍵が掛かってなかった。
T:へぇ、で、捨てなきゃならないものって何だったんですか?



撮影用ライトに眩しそうに目を細めるMさん


M:ここをずっとまっすぐ下って行くとね、4000 トンの水が貯まってる冠水対策用の貯水槽があるんですよ。4000トンって想像できますか?
T:いや、全然。
M:とにかくでっかいんです。で、日本は雨が多いし、そんな量の水を抜く事なんて不可能だから、重石をつけて沈めれば何も浮かんで来ない。
T:へぇ、じゃあ死体なんかも捨てられるんですね。覚えておきゃなきゃ、って冗談ですけど(笑)。
M:ははは。
T:でも、とにかく捨てなきゃならないものを捨てたんだったら、もう地上に戻っても良かったじゃないですか。なぜここに残ることを決意されたんですか?

Mさんの口から出た答えは意外なものだった。

(インタビュー PART 3 に続く)

Monday, July 11, 2011

今日のドギースタイル

こんばんは。
さぁ、今日もわんこを紹介する時間がやってきました。
そういえばドギースタイルって、英語ではすっごい良い意味を持ってるんだよ!
君が産まれてきた理由かもしれないよ!是非ググってみてね!

あぁ、悪魔の旋律、この邪悪な足音が、君には聞こえるかい、
わんこだよ、わんこだよ、わんこだよ、わんこだよ!!!!!!!!

そんなこんなで、
今日は、本当に身内ネタで申し訳ないんですが、
わたしのおばあちゃんのわんこ(マジで)を紹介しちゃおうかな!
このわんこの名前は、プリンちゃんっていうんだ!




かわいいでしょ!左がプリン(犬)、右がこの記事を書いてるわたし(人間)!
間違えちゃイヤ!

それでは早速、プリンちゃんの自己紹介を。わふわふお!!

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名前:プリン
名前の由来:前の飼い犬の名前がジョンだったから外来語っぽい感じを狙って
性別:オス
種類:キャバリア
年齢:不明
趣味:砂を掌で握って人間にかける
好きな食べ物:その時々の旬の物
嫌いな食べ物:酸っぱい豆腐。まじやめてほしい。喰わせる前に味見しろよ。
好きな人:コジママリ以外ならいい
嫌いな人:コジママリ。まじ触んなブス
チャームポイント:切れ長のアイライナー
読者へのメッセージ:中に病
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かわいいプリンちゃん、可愛いセーター!
趣味がいいんだお>_<
アイライナーの感じもカメカメカメカメカメレオン歌ってるあの男みたい!
おしゃれ!

くそ!

それではまた今夜!!わんだふる!!

★まだまだみんなの家族のワヌコ達も募集しているよ!!わんこの写真を送ってね!!
あっ、エロ無修正写真は送ってきちゃダメだワン!!サイバー警官に捕まっちゃうお!!

コジマ

ザ☆取材拒否の店! 錦糸町 Y本

超イケメン編集者、田町のブラッド・ピットことタクティ〜☆です。

なんだか r e d r i v e r 、色々なところで噂になってるみたいですね。さすがミスター・フェン!でもまさか雇われ社員の小生が参加しているとは言えず、本当に何も得がないです。ハイ。

さて、今回もサクッと取材拒否の店を紹介しちゃいましょう。





オッサンパラダイス錦糸町の♡ホテル街から数分ほど歩いたところのY本。この辺は本当に安くておいしい店が多いので有名ですが、小生のお気に入りイメクラ嬢ノンちやんの働くお店も近くにあるというのもテンション上がる理由。まあ、そんな場所柄ということもあるかもですが、Y本のスペシャリティーは豚のキンタマのお刺身。新宿の朝立(アサダチ)なんかも有名ですが、Y本のキンタマがひと味違う理由はなんとスペインから直輸入されたイベリコ豚のキンタマだということ。たかがキンタマだと侮ることなかれ、キンタマだってブランドの時代です。


丸い睾丸を手延べで細長くするのがポイントだそう


お味は淡白でちょっとコリコリ。ほのかに口の中に広がるドングリのお味はイベリコ豚ならではのキンタマ。これ、本当に美味しいんです!ちなみにキンタマの語源は生玉(いきだま)。それが詰まってキンタマになったそうです。よって精がつくのはもちろん、なんと自律神経の乱れを整えてくれる作用もあるとのこと。

昨今、中高年の鬱病や自殺なんかが問題になっていますが、Y本でキンタマを食べて夜の歓楽街に繰り出せば、きっと心の病なんて吹っ飛んじゃいますよ!

それではまた次回!

【お店データ】
店名:Y本
場所:錦糸町
評価:☆
おすすめ:タマ刺

Friday, July 8, 2011

FEN の名作動画劇場2

こんにちは、フェンです!

r e d r i v e r 、早くもアクセス数が大台に乗ってしまいました。宣伝らしい宣伝もしていないのに、みんなどこから噂を聞きつけるのやらと嬉しくもありながら少し恐くなってしまうのですが、これも一重に才能のあるライターの皆さんのお蔭だと思うと本当にありがたいです。

みなさんご存知の通り、僕、大の犬好きなのですが、ワンちゃんファンにはもうたまらない新連載が始まってしまいました。スティーブンちゃん本当にカワイイですね!今度、僕の犬も出してもらいたけど、無理だろうなぁ。厳密には犬じゃないし。

さて、今日の動画は Otto Muehl の Kardinal 。今日、新人編集者Tの誕生日だったんですけど、サプライズで女の子が用意してくれたケーキが何かに似てるなと思っていたらコレでした。とてもおいしかったですよ。

T君、おめでとう!
君の 25 歳の一年が素晴らしいものになるよう祈っているよ。

フェンでした!






Otto Muehl: Kardinal, 1967

今日のドギースタイル

新シリーズ、今日のドギースタイル、始まりました。
皆様のご家庭でドメスティケイトされたわんこ達を紹介していきたいと思います。

犬!犬!犬!あぁ、渋谷系な響き!!!

さぁ、本日紹介しちゃうお初のわんこは“スティーブン金具(きんぐ)”ちゃんです。
飼い主の恵美子さんが得意のフォトショップでスティーブン金具の写真をデコってくれました!とってもまぶしくて失明しちゃいそう。フォトショはCS4を使用しているとのこと。


それでは早速、スティーブン金具の自己紹介を。わふわふお!!

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名前:スティーブン金具
名前の由来:なんとなく
性別:♂ 可愛い子がいるとおっきしちゃう!
種類:不明。チンチラ?
年齢:6才だワン
趣味:刃物を人に向ける
好きな食べ物:漬け物。でも胃に腫瘍ができやすくなるとのことで減塩中。
嫌いな食べ物:じゃがいもとパサパサしたパン
チャームポイント:顎。毛はスルーしてほしい。骨格を見て。
読者へのメッセージ:悪ノリばかりしててごめんね
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あぁ、スティーブン金具、かわいいわんこで心がHOKKORIしたワン!

あっ、途中からスティーブン金具って呼び捨てになってたね!
めんごッチ>_<

それではまた今夜!!わんだふる!!

★只今、みんなの家族のワヌコ達も募集しているよ!!

コジマ

Wednesday, July 6, 2011

人から借りた本感想文: 『刑務所の中』 花輪和一




モデルガン好きが高じて改造銃を山林で試射していたことが発覚し、銃砲刀剣類不法所持、火薬類取締法違反で懲役三年の実刑を受けてしまった花輪和一の服役日記。かなりの嘆願書が集まったにもかからず執行猶予が付かなかったのは、ロシア崩壊後にお金に困ったロシア軍人が北海道で銃器の密売を頻繁に行っていたという時勢のためだそう。アンラッキーではあるが、この刑務所での生活を描いた作品が初ヒット作になったことを考えるとまあ人生っていうのは一筋縄では行きませんね。

ポリティカルなことや、体制に対する批判などがあるわけではなく、ただ刑務所に於ける日々の生活を淡々と緻密に描写。ありきたりな感情を排除することで、システムの馬鹿馬鹿しさというものを表現しているところが非常にナイスです。

毎日食事のことばかり考えながら暮らしている自分自身の姿を作者はブタに重ね合わせるのですが、でもそれって別に刑務所に入っている人だけじゃないですよね。繁華街を歩けばラーメン屋の前には長い行列ができてるし、テレビ付ければデパ地下やらグルメレポートだし、コンビニだって24時間営業して何売ってるって食べ物売ってるわけだし。刑務所はエクストリームなケースというだけで、みんな所詮ブタ。社会という仕組みのなかで飼いならされているわけですよ、ブヒー。が、別にそれに対して批判があるわけでもなく、寧ろ平和でいいんじゃん的なメッセージはとても好感が持てます。ブタの絵、かわいいし。

普通におもしろかったです。

Tuesday, July 5, 2011

今日の落とし物

道端に髪の毛の束が落ちてたよ
君 の か な?

心当たりのある方は下記までメールください
catsuma_cazuyo_dayoooo_xxx1968xxx @ tabechatta . com

夏の嵐



眠れない時にはヒツジを数えるのを習慣にしているのだけれども、今夜は想像しうる限り一番キュート(なんだけど恐ろしく獰猛)な架空の生き物に名前を付けて、ソイツを数えることにしようかと思う。





Friday, July 1, 2011

ザ☆取材拒否の店! 神保町 C.P.

ベテラン巨根編集者こと田町のジョニー・デップ、タクティ〜☆です。普段は某週刊誌でB級グルメ(と風俗)に関する記事を書いていますが、ミスター・フェンから頼まれたら嫌とは言えず(まだ死にたくないですからね) r e d r i v e r のグルメ記事を担当することになってしまいました。何も得がないです。ヨロオネです。

さて、サクっと本日の取材拒否の店を紹介しちゃいましょう!




知る人ぞ知る神保町の名店 C.P.です。
雑誌の編集とかなさってるオッサン達には割と有名ですね。もちろんザ・取材拒否の店。小生、かれこれ17年ぐらいの付き合いです。

この店のスペシャリティーはなんとブタの入っていないスブタ。

それって単なるスじゃないですか!?

と突っ込んだ小生を無視して中華鍋を振るうMさん。





ドーン!



出て来たのは、どんぶり一杯の甘酢餡と白米。ほんわかと白い湯気が立ち上り、まるで風呂あがりの美女の火照った柔肌のような輝き。「アタシを食べて」って言ってます。あーもうタマラン!期待で思わずお腹が鳴って、熱々をレンゲですくってフハフハしながらいただきます!果たしてそのお味は?

っていうか、これ単なるスじゃないですか!?

Mさん、笑いながら「だってスブタからブタ取ったらスね」

それもう先に言ったし!

まあ甘酢好きには恐らく堪らない一品なんでしょうね。
別にあまり甘酢に興味がない小生にとっては人をナメきった糞な料理ですな。
写真撮り忘れましたが、まあどうもいいでしょう。

ちなみにこの店の汁なし担々麺は都内一です。

それではまた次回!

【お店データ】
店名:C.P.
場所:神保町
評価:☆☆☆
おすすめ:汁なし担々麺

Thursday, June 30, 2011

FENの名作動画劇場1

こんにちは、フェンです!

会社の若い子に『せっかくウェブマガジンを始めたんだったら動画なんかも投稿しなきゃダメですよ』と言われ、早速 Youtube で色々検索してみたのですが、いやいやビックリ、本当に何でも見つかるんですね。僕が若い頃にはどこを探しても見つからなかった、いや輸入ビデオ屋にあっても何万円もした映像がクリック一つで見れてしまうなんて本当に今の人は羨ましい!が、これだけの情報が溢れているとどこから手を付けていいのか分からなくなってしまうというのも事実でしょう。こないだもパーティーで某媒体の編集長とお話していたら『wikipedia が主な情報源なのに、知ったか振りでマニアぶってる輩が多すぎる』なんておっしゃっていて、そんなものなのかなぁと残念に思うと同時に、今後益々独自の視点やフィルターが重要な位置を占めてくるのかな、と僕の新たな試みであるこの r e d r i v e r に対する思いを新たにしたのであります。

写真家でもある小嶋さんの貴重なメモワール、新人編集者 T による暗渠探訪、そして匿名を条件に執筆を快諾してくれたベテラン巨漢ライターによるグルメリポートなど、ウェブならではの他では読めない連載や読み切りが続々と登場予定します。どうぞご期待下さい!

さて、前置きが長くなりましたが。こんな暑い日にぴったりの映像をお届けします。キャロリー・シュニーマンの FUSES(の一部)。本当は MEAT JOY にしたかったのですが長いものがなかったので。と、無いものがあって逆に安心してしまう意地悪なオジサンことフェンでした。





Carolee Schneemann: Fuses, 1965

Wednesday, June 29, 2011

寄生されていませんか? - 1995年の記録1

まだインターネットが普及してなかった頃、ブリットポップってカッコいいワネ!という時代に、日本ではボロコモニと呼ばれる寄生虫がとても流行した。

ボロコモニはギョウ虫のようなもので、野菜を介してヒトの盲腸に潜み、産卵を肛門で行う。卵を産みつけられると痒くて痒くてたまらなくなって肛門を掻きむしってしまい、その卵がへばりついた手から食べ物などを介して他人の口へと運ばれ感染するというネバーエンディングなループを繰り返す厄介な寄生虫だ。

当時は、黒いバックグラウンドにただただ大きく、ストレートに「寄生されていませんか?ボロコモニ 厚生労働省」と赤い太い文字でプリントされたボロコモニ予防のポスターを街角でよく見かけた。その下には大体箱が吊るされており、中にはボロコモニ予防法についてのパンフレットが入っていた。

あの事件が起きた時、ボロコモニについてこれでもかというほど調べたから、15年以上経ってしまった今でも、ボロコモニの生態については割とはっきりと覚えている。

寄生の仕方はギョウ虫と全く同じだが、ボロコモニの成虫はギョウ虫より随分大きい。ボロコモニの成虫(メス)の体長は、目に見えるほどの大きさで約7cm、ギョウ虫の成虫(メス)の約7倍もある。ギョ ウ虫は1時間の間に約8000個の卵を肛門付近に産みつけるのだが、ボロコモニはそれより随分少なく50個程度。だがその代わり、卵が大きい。ギョウ虫の卵は直径40μm(1mmの25分の1程度)だが、ボロコモニの卵は1〜2mmで、目を凝らせばうっすらと目に見えてしまうほどだ。そして色は赤い。なぜか体液が赤いのだ。

卵を孕み体をパンパンに赤く腫らしたメスのボロコモニ達は、寝ているヒトの肛門が緩んだ隙にウヨウヨと肛門付近 に集まり一斉に卵を産む。そしてメス達は産卵の後、力尽きて死んでしまう。産み落とされた卵はブツブツとした赤い塊となり肛門の内側の粘膜にぶら下がり、約4日という早さで成虫になる。メスの死骸はボロボロと崩れ粉々になり便と一緒に排出される。

卵も成虫も生命力は気持ち悪いほど強く、空気にも熱にも強いため、感染した場合はシーツや下着を沸騰したお湯で3分間消毒しなければならなかった。

しかし、ボロコモニに寄生されたからといって命に関わるということはなく、薬を飲めば短期間で簡単に駆除できる。寄生された場合はお腹の調子が悪くなったり、食欲が無くなったり、掻きむしったアナルが炎症を起したりと、本当にその位の程度のものだった。

しかし、僕の通っていた小学校では、一人の苛めっ子が自信満々に
「人糞で野菜育ててそれを喰ってる貧乏人だけがボロコモニもらっちゃうんだぜ、気持ち悪い」と吹聴したせいで、この風評じみた馬鹿げたことを皆が信じてしまい、ボロコモニに寄生され万が一バレてしまったら、もう学校にも行けなくなる程恥ずかしいこととして認識されるようになってしまった。その上、「糞喰らい」という恐ろしいあだ名もつけられる。あの頃は、もしボロコモニに寄生されてしまったらと思うと、怖くて怖くてたまらなかった。

僕には、モトちゃんとノリちゃんという一卵性双生児の女の子の幼なじみがいた。
2人とも、ちょっと浅黒い肌が健康的で可愛らしいとても素直な子達だった。扁桃炎を繰り返し膿栓が溜まり口臭が醜い上に不細工だった僕にも、いつも優しくしてくれた。お菓子作りが女の子の間で流行り始めたときにはクッキーを焼いて持ってきてくれた。僕は、モトちゃんとノリちゃんの3つ隣の家に産まれたことが 本当にうれしくてうれしくてたまらなかった。

クラスが一緒だったモトちゃんは特に僕を慕ってくれていて、僕が学校を休んだ日には僕の家まで顔を覗きに来てくれた。朝からカップラーメンを食べて学校に行き気分が悪くなり教室の隅でゲロを吐いてしまった時も、モトちゃんは上履きのまま走って運動場に向い両手一杯に砂を掬い取ってきてくれて、恥ずかしくないようにと僕のゲロの上にその砂をそっと撒いてくれた。その後、口を濯ぐときも心配そうについてきてくれた。

笑うと右頬だけに浮かび上がるえくぼがとても愛らしくて、そのくぼみを舐めてしまいたかった。あぁ、本当に将来、モトちゃんと結婚したかった。

モトちゃんとノリちゃんの家はちょっとした大家族だった。
フィリピンパブに入り浸っている自営業のお父さん、町役場で働くお母さん、多少気が狂ったおばあちゃん、お兄ちゃん2人と、モトちゃんより7つ上のお姉ちゃんの8人家族だった。モトちゃんとノリちゃんの家は、そこまで裕福な家庭とはいえなかった。無茶ばかりする2人のお父さんのワンマン配管会社は借金まみれな上に経営不振で、いつ倒産してもおかしくない状態だった。そして、周りもその事を知っていた。しかし2人の愛くるしさはそんな事実をどうでもよくしてしまう力があった。

ある日、学校の終礼でボロコモニ検査用のシール(セロファンのようなもの)と付属の薄い封筒が配られた。このシールは二つ折りになっていて、半分の面は粘着状になっていた。朝起きたら、このシールを開いてツルツルした面をお尻の穴に当て、それからまた二つ折りにして張り合わせるようにして封筒に入れ、明日の朝提出することと担任から指示が出た。モトちゃんが自分自身でそのシールをお尻の穴に擦り付ける姿を想像すると、とても興奮してしまった。僕はお母さんにやってもらうんだし、モトちゃんの場合、妹のノリちゃんがモトちゃんの可愛いお尻の穴にシールをあてがったりするかもしれないな、と思うと、もっともっと興奮した。

そして、次の日に、あの事件へと繋がる出来事が起きてしまった。

続く

Tuesday, June 28, 2011

渋谷暗渠探訪1

会社の近くにドブ川が流れている。淀んでいて、生臭くて、いつ見ても同じコンビニのビニール袋と赤いコカコーラの缶が浮いている。橋のたもとには浮浪者の溜まり場になっている公衆便所があって、まさか垂れ流しているわけでもないけれど、この水を飲んだらと考えてゾッと身を震わせながら出社するのが習慣になっていた。

川は渋谷駅に向って流れ、そして山下書店の手前で地下に潜って見えなくなる。

「渋谷の街の下には巨大暗渠が存在してるんですよ」

ふと思いついて川の名前を尋ねた私に、そう教えてくれた物知りな同僚のHさんの言葉がこの取材を始めるきっかけになったのは言うまでもない。

映画の方が有名なバリー・ギルフォードの小説『ワイルド・アット・ハート』の中で、主人公の少女ルーラがケイプフィア・リヴァーのよどみを見つめながら『川のどんずまりにいるのは、ちょっと気持ち悪い』とぼんやり考えるシーンがある。世の中にはそんな風に物事を感じ取ってしまう不幸な類の人間が存在しているのだ。そんな人たちにとって、人生は息の詰まる耐え難いもの以外のなにものでもなく、きっと山下書店の脇からひょいと橋の下に飛び降り、鉄の柵(カギが掛かっていなどと誰が信じるだろう?)を潜り抜け暗渠に向かった人たちも多かれ少なかれ同種の生き苦しさを感じていたのではないかと思う。

「もうかれこれ十年ぐらいになるんでしょうかね」

インタビューに答えてくれたMさん(52)は、温厚そうな紳士で、地上では(暗渠の住人は私たち一般の人間が住む世界をそう呼ぶ)ペットショップを経営していたらしい。量は少なくなっているが黒々とした髪をきちんと整髪料で整え、アイロンのかかった半袖のワイシャツを着ていた。

暗渠という言葉から真っ暗闇を想像していた私にとって、ほの明るく清潔感のあるMさんの住環境はおどろき以外の何物でもなかった。またこの取材をするにあたり覚悟していた悪臭もなく、近くのドラッグストアで購入した虫よけスプレーもただの嵩張る荷物で終わりそうだった。しかしもちろんこの場所が快適かというとそういうわけででもなく、水の中に大量に投下された消毒薬の刺激で両目は涙ぐんでいたし、また普通では考えられない高さの湿度で発生したカビのせいか肺が心なしか痛かった。

              (インタビュー PART 2 に続く)