Wednesday, July 6, 2011

人から借りた本感想文: 『刑務所の中』 花輪和一




モデルガン好きが高じて改造銃を山林で試射していたことが発覚し、銃砲刀剣類不法所持、火薬類取締法違反で懲役三年の実刑を受けてしまった花輪和一の服役日記。かなりの嘆願書が集まったにもかからず執行猶予が付かなかったのは、ロシア崩壊後にお金に困ったロシア軍人が北海道で銃器の密売を頻繁に行っていたという時勢のためだそう。アンラッキーではあるが、この刑務所での生活を描いた作品が初ヒット作になったことを考えるとまあ人生っていうのは一筋縄では行きませんね。

ポリティカルなことや、体制に対する批判などがあるわけではなく、ただ刑務所に於ける日々の生活を淡々と緻密に描写。ありきたりな感情を排除することで、システムの馬鹿馬鹿しさというものを表現しているところが非常にナイスです。

毎日食事のことばかり考えながら暮らしている自分自身の姿を作者はブタに重ね合わせるのですが、でもそれって別に刑務所に入っている人だけじゃないですよね。繁華街を歩けばラーメン屋の前には長い行列ができてるし、テレビ付ければデパ地下やらグルメレポートだし、コンビニだって24時間営業して何売ってるって食べ物売ってるわけだし。刑務所はエクストリームなケースというだけで、みんな所詮ブタ。社会という仕組みのなかで飼いならされているわけですよ、ブヒー。が、別にそれに対して批判があるわけでもなく、寧ろ平和でいいんじゃん的なメッセージはとても好感が持てます。ブタの絵、かわいいし。

普通におもしろかったです。

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