Sunday, July 31, 2011

渋谷暗渠探訪3

これまでのインタビュー

Mさん(以下M):メメモダケを発見したんです。

編集T(以下T):メメモダケ?

M:貯水槽から地上に戻ろうとしたら、まっすぐに歩けばいいだけのはずなのに何故か道に迷ってしまったんです。当時は暗渠の中は真っ暗で、もう二度と地上に出られないかもしれないと途方に暮れていたら、ぼんやりと明るい光が見えてきて……

ここでMさんは用意してあった段ボール箱を取り出すと、慎重な手つきで蓋を開きその中味を見せてくれた。中から現れたのは黄緑色のキノコだった。発光性なのか、辺りの暗闇がほんのりと優しい色に染まった。メメモダケ、どこかで見たことがあるような……。

M:そうです、スーパーマリオブラザーズの1UPキノコはメメモダケがモデルなんです。

T:へぇー!!! 



実際のメメモダケは嫌光性



M
滋養強壮に優れたメメモダケだからこそ、きっと生命が一つ増えるというアイディアが生まれたんですね。また不老不死を求めた始皇帝が煎じ薬として飲んでいたという史実も残っています。まさかそんな貴重なメメモダケをこんな場所で見つけるとは思ってもいませんでした。

T:すごい発見ですね!

M:人工的に栽培が可能になれば、それは現在の医学や薬学に大きな躍進をもたらす。今は難しいとされている病気の治療にも役立つかもしれない。

現在、Mさんは『メメモダケ研究センター』の所長として日夜メメモダケの研究・栽培に取り組んでいる。来年度には政府からの助成金も支給される。


暗渠から地上に出た私は思わず目を細めた。暗闇に慣れた目には眩しすぎる激しい七月の日差しだった。渋谷の喧噪を聞きながら、Mさんが別れ際に言った言葉を思い起こした。

「最近なぜか無性に犬がまた飼いたいんですよ。茶色のテリアかなんか。歳を取るってこういうことなんでしょうね」


渋谷暗渠探訪:完






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